『誰も知らない小さな国』 ~児童文学再読~



こんにちは。

子供の頃、図書館が好きだったなら『誰も知らない国』の名前を一度くらいは聞いたことはあると思います。
昭和34年の発刊以来、未だに愛され続ける児童文学の王道ともいえる一冊です。

大人になった今、読み返してました。
当時とは違った視点でも読めて、楽しくもあり懐かしくもありという感じでした。

『誰も知らない小さな国』のあらすじ

コロボックル達との遭遇

舞台は太平洋戦争の前の日本です。
まだ小学生だった主人公『ぼく』の周りではモチの木を食べるのが流行っていました。
しかし、ガキ大将のせいで小さな『ぼく』は分け前はほとんどもらえません。

そんな『ぼく』は自分だけのモチの木を探すべく山の中を探し回ります。
そして、知られていない小山を発見します。
その小山を気に入った『ぼく』は、何度もそこに通っています。

ある時、小さな女の子と遭遇します。
女の子が小川に流してしまった靴を拾うべく追いかけると、そこには3センチくらいの小さな小人コロボックルがいたのです。

その後、『ぼく』の家は引越しをします。また、太平洋戦争も始まり、いつしか小山へは近づかなくなっていきました。

再会と交流

しかし、終戦を機に、『ぼく』は再び小山を訪れます。
それ以来、『ぼく』の周りを素早く動く影が目に付くようになります。
小山の土地を譲ってほしいと地主に頼みますが、学生の身には厳しい話です。
しかし、地主に気に入られて何度も小山に通っていると、『ぼく』の前に再び小人コロボックル達が現れ、言葉を交わします。

矢じるしのさきっぽの、コロボックル小国

就職した後、『ぼく』は地主の許可を得て小山に小屋を建て始めます。
同時に『おちび』と呼ばれているらしい女性も小山に時折来ていることが分かります。

小屋ができるとコロボックルが再び『ぼく』の前に現れ、自分達の味方になってほしいと頼まれます。
コロボックル達と交流を深め、『ぼく』の日常は不思議でコロボックル達との楽しい交流に彩られていきます。

さらに、小山で出会った『おちび』さんが近くの幼稚園で働いている先生であることが分かったり、彼女もコロボックルの存在にうすうす気づいていることが分かったり。
少しずつにぎやかになっていくコロボックルと『ぼく』の日常。



しかし、そんな楽しいひと時もつかの間。
コロボックル達の小山が新しく敷設される道路のうえにあることが分かりーー。



という感じですね。

感想とその魅力 『誰も知らない小さな国』を織り成す、雑味の一切ない透明感

子供の頃、『誰も知らない小さな国』が大好きだった理由。

やはり、その純度の高い好奇心は何物にも代えがたい魅力でしょう。
極めて透明感の高い物語と言い換えてもいいかもしれません。

エゴイスティックな劣等感があるでもなく、戦前戦後の凄惨さを訴えるわけでもない。
70年前の話なのに古臭いところを感じさせないのは、時代性などの余計な部分を文章に込めず、瑞々しい好奇心だけが詰め込まれているからです。

誰にも知られない秘密基地のような小山。
そこに息づく不思議な小人コロボックル。
自分と同じ感覚を共有してくれるちょっと不思議な女の子。
互いに影響を及ぼし少しずつ変わっていく『ぼく』達。
心の美しいところだけを取り出して精製したような、清らかな湧水のような好奇心の物語。

子供の心には確かに響くでしょうね。
大人の今よりも、心の中の濁りがなかったのですから。

大人になった今だから面白いところ

「やってみれば、何かが変わるかも」というメッセージ性

後半の、コロボックル小国を危機が襲う展開の中に織り込まれていたメッセージです。
目の前に立ちふさがる壁に尻込みする『ぼく』に対して、小人コロボックル達や『おちび』先生が「とりあえず行動してみろ」と教えてくれます。

もちろん誰からも愛される児童文学である以上、ご都合主義的な物語展開もあるのですけれども。
ただ、怯えてたまま何もしないのでは何も解決しない。それは現実世界と一緒です。


少し勇気をもらえます。

ラブストーリー

第1巻の段階では、『ぼく』と『おちび先生』の関係は、まだ始まったばかりです。
しかし、こちらも瑞々しい透明感に満ちています。


おちび先生、可愛らしいですね。
『ぼく』との出会いを童話風に変えて、幼稚園児に聞かせてみるあたりは素敵でした。


ただ、二人の関係については、早熟な方は子供時代からワクワクしていたのかもしれません。
当時の僕は全く意識をしていませんでしたが…。

皆さんはどうでしたか。

あの頃の自分と今の自分を見比べて

透明度の高い物語には、それを読む自分の姿が映っているはずです。
あの頃の自分と、今の自分。
ついつい見比べてしまうはずです。

あの頃はただワクワクして楽しめたのに。すっかり世俗に汚れた今の心にはまぶしすぎる。とか。
あのころと同じ気持ちで楽しめてる自分がいる。自分の中にもこんな純粋な部分が息づいていたんだ。とか。

人それぞれ、色々感想が心に浮かぶのではないでしょうか。

『誰も知らない小さな国』を読んでいた頃の自分と、今の自分との距離は、どれくらいありますか。

まとめ 『誰も知らない小さな国』の感想とその追憶



『誰も知らない小さな国』は児童文学の金字塔ともいうべき作品です。
澄み切った湧水のような子供の好奇心を打ちぬくべく、その一文一文が徹底的に研ぎ澄まされています。
日本児童文学の最高傑作とも言っても過言ではないはずです。

子供の目で見ても本当に楽しくて。
大人になってから読んでも美しくて。
素敵な一冊だな、としみじみ思います。

読後に残る余韻は人それぞれかもしれませんが、誰にとっても美しい余韻であるはずです。

大人になってから読むと、あの頃のこと、思い出したりもするかもしれませんね。
空調の効いた図書館の匂いとか。
行き帰りの自転車から見える風景とか。
公園やグラウンドから聞こえる誰かの笑い声とか。



それでは。また。

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