カエサルによる戦況報告『ガリア戦記』



こんにちは。


紀元前文学 第3回です。
今回は、ローマの智将カエサルによる『ガリア戦記』です。

『ガリア戦記』は7年にも及ぶガリア(現在のフランス)制圧の過程を、ローマの智将カエサルが自ら書き残した作品です。

書かれたのは紀元前50年頃。戦中に逐一本国に送っていた戦況報告を元にして、制圧直後に書かれたと考えられているそうです。

『ガリア戦記』はガリア人やゲルマン人との戦いの鮮明な記録だけでなく、文筆家としても名高いカエサルの簡潔で力強い文章も評価されています。
そして、『ガリア戦記』最大の魅力は、文章から匂い立つ著者カエサルの野心と才気に溢れる強烈な個性です。

そもそも『ガリア戦記』の著者カエサルって誰?

カエサルは、紀元前1世紀に活躍した古代共和制ローマの政治家・軍人です。

ローマ領土拡大の先頭に立ち、ガリアのみならずエジプトやアフリカも制圧し、やがては終身独裁官となりローマ帝政への礎となりました。
皇帝(カイザー)の語源は、彼の名前でもあります。


他にもやたらと民衆から人気があったり、エジプトの女王クレオパトラと浮名を流したり、「ブルータス、お前もか」などの名言の数々を残したり、何かと印象的なエピソードの多い人物です。

そんなカエサルがガリア遠征をおこなったのは四十三歳のとき。脂の乗り切った野心溢れる男による戦況報告『ガリア戦記』には、イメージアップのために自ら創り上げた『カエサル』像が強く投影されています。

『ガリア戦記』の物語 要約

ガリア戦記は、カエサルがガリアを制圧するまでの記録です。

ドラマやゲームみたいな「戦争→負かす→支配」みたいな分かりやすい展開はまったく登場しません。

ローマ寄りのガリア人部族の依頼で横暴な振る舞いをするゲルマン人を倒したり、
ガリアに攻め入っていくるブリタニア人を倒そうと遠征の準備をしていると従順の意を示していたガリア人部族が裏切ったり、
現地支配のための傀儡にすべくあの手この手でローマ寄りのガリア人部族の支配体制を安定させようとしたり、
さらにはガリア全土を平定した後、一番頼りにしていた部族が反旗を翻したり。

遠征先で船が壊れちゃって大ピンチになったり、部下が敵の嘘に踊らされて大敗北を喫してしまったり。

困難がひたすら付きまといます。全然順調には進まないんです。
「3歩進んで2歩戻る」という言葉そのままに、カエサルはローマの支配を丹念に浸透させていきます。



そんな『ガリア戦記』、読み物として本当に面白いんです!

手に汗握ります。困難を脱するカエサルの知略に心躍ります。

当時のローマ市民はこの本に熱狂したそうですが、確かに次がどうなるのか非常に気になる文章です。

『ガリア戦記』とカエサル

本書はカエサルが自分の実績を周囲にアピールするために書いた書物です。
当然、カエサルの人間性が投影されていて大変興味深いです。

登場人物としてのカエサル

『ガリア戦記』のカエサルは、持ち前の機転で幾多の困難を潜り抜けます。
戦場では総大将として全体像を俯瞰し、自兵が有利になるよう配置していきます。
危機が迫れば自ら最前線に赴き士気を高めることもあります。

また、味方の兵隊が敵に怯えれば弁舌巧みに鼓舞し、血気余って町を略奪をしそうになれば鋭くいさめます。

部下達への気配りや親愛の情などが垣間見える一方で、
自信家で尊大な面を隠しきれていない部分があったりします。

書き手としてのカエサル

『ガリア戦記』は、事実を淡々と書くようなシンプルで力強い文章が印象的です。
自分の手柄をこれみよがしに賞賛したり、誰かの失態を感情的に攻撃したりしません。

どんなことでも詳細に記されていることもあり、読み手としては客観的な事実だけが書かれているように感じます。

一人称が「カエサルは――」となっているのも、『ガリア戦記』の個性を印象付けています。


ただし……、
ガリアの宝物殿を略奪したことなどカエサルの名誉を損なうことには触れられていません。
そして、(自分の偉業が)「ローマに知れると、二十日間の感謝祭が催された」というアピールがさりげなく差し込まれます。

また、名言が時折挟まれるのも良いところです。
頁を繰るたびに知的な楽しみを与えてくれます。

およそ人は自分の望みを勝手に信じてしまう」

というのが、僕のお気に入りです。

まとめ ガリア戦記の魅力とカエサルの魅力

ガリア戦記の魅力は、カエサルという男の魅力そのものです。

能力があって尊大な態度を取るのに、何故か皆から好かれる野心の塊みたいな好漢。
それもローマという史上有数の大国家のトップにまで上り詰めたんだから、その魅力は一際強烈です。


異彩を放つ圧倒的なカリスマ。もしも「ガリア戦記」を読み終えたなら、そんな男の一面に触れた気になるはずです。




さて、今回はこんなところで。
いかかでしたでしょうか。


それでは、また。

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