Colleenという音楽家が生み出したアルバムについて。 妖精とさえ戯れる、変幻自在の森の奏者。



こんにちは。

Colleenはフランス出身の音楽家です。

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カテゴリーとしてはポスト・クラシカルになるのでしょう。

しかし、その楽曲にはチェロ、アコースティックギター、ウクレレ、オルゴールなどはもちろんのことエレクトロニクスも多用されており、幻想的な音世界を構築しています。
また、他のポスト・クラシカル系の音楽家とは一線を画す森のメルヘン的な雰囲気が濃密に立ち込めています。
環境音楽や実験音楽などにカテゴライズされることもあるような、サウンドスケープ型も音楽と言えます。

また、サウンドスケープがアルバムごとに大きく変わるのも鮮烈です。

というわけで、そんな彼女の全アルバムについて語ってみました。
ただ、言葉では分かりにくいので例の如く図にします。

いかがでしょうか。
例の如く主観そのものですが…。
では、アルバムごとに語ります。

おすすめしたい名盤がたくさん! Colleenのアルバムについて

Everyone Alive Wants Answers

記念すべきデビュー作です。
メルヘン系ポスト・クラシカルサウンドに初期衝動がぎっしり詰まった、Colleenで最も濃厚なアルバムです。

弦楽器を主軸にしながらも、グロッケンやオルゴールなどの音色、鳥の鳴き声やプチノイズなどのSE・サンプリングで彩りを加えています。
そして、アルバム全体を覆うディレイ・リバーブから濛々と立ち上がるのは、頭がくらくらするほどに強烈で妖精的な濃霧です。
まるで、森の中で数え切れないほどの妖精が笑いながら飛び交っているようです。

本作はループがサウンドの中心になっています。
繰り返される淡い旋律や音響がしっとりと帯びる叙情性には、人の気配さえ感じない森の奥を延々と歩いているかのような印象を感じさせられます。
苔むした木々に類するような、寂びれた神秘を感じさせる美しさです。

また、歌があるわけでもなく、力強いビートがあるわけではありません。
しかし、おとぎ話のように不可思議で理不尽で、いけないと分かっていながらもついつい足を踏み入れてしまいたくなる危うい香りに満ちています。

また、そんなメルヘンな森の幕間から顔を出す作り手の鋭い感情にも心奪われます。
エフェクトが消え、不穏な音色が淡々と静寂に溶ける瞬間、大木に潜む深淵のような洞を見つめているような感覚になります。

時に幽玄で、時に不穏で、
苔むした朽ち木に突き立てられた、血塗られた剣。
本作は、そんな幻想的で衝撃的な世界を描いている作品です。

The Golden Morning Breaks

傑作1stをまるまるサンプリングした異色の2ndです。
ユニコーンを抱きしめる少女、というジャケットアートも印象的です。

1stよりも控えめで耳触りの良いサウンドになっています。
ただし、それは幻想的な雰囲気が弱まったというわけではありません。

妖精的な濃霧がやや引いて、今までは見えなかった幻想のリアリティが見えるようになっています。
崩れ落ちた小屋や不思議な生き物達の姿が露わになっているかのようです。
ただ妖精的なだけではない、現実的な営みを感じさせるような童話世界へと様態を異にしています。

活き活きと跳ね回るグロッケン、芳醇な余韻を響かすツィター、哀愁を残し静寂に消えていくアコースティックギター。
いずれも1stのように強烈なエフェクトがかかってることは少なく、楽器そのもの姿が伝わってきます。


沢山の楽器を用いて、Colleenはメルヘンな旋律を積み重ねていきます。
楽器はシンプルに響きます。
息づくような一音一音が童話の世界を創り上げます。

楽器の生々しい音色が、薄暗い森の姿を色鮮やかに描き出しているのです。

Les Ondes Silencieuses

日本ツアーによって受けた影響も反映しているらしい3rdアルバムです。

作風としては大きく変わることはなく、童話的な世界観になっています。
2ndの流れを踏襲しつつより楽器の音色そのものの魅力を生かす方向性に進んでいます。

ただ、サンプリング音楽を感じさせるループ的な構成も鳴りを潜め、より楽器本来の魅力を生かす構成になっているのは特筆点でしょう。

ツィターの旋律は高貴にして軽やかで、
アコースティックギターの音色は優しく静寂を紡ぎ、
チェロは森の神秘的な空気を描き、
フルートはのどかな青空のように広がっていきます。

楽器とそれを引く人の魅力がのびのびと発揮されています。
以前のひそやかな雰囲気を残しつつも、解放感が感じられるのが楽しいですね。

楽器そのものの魅力が最も感じられるアルバムであり、最もポスト・クラシカル的なアルバムと言えるでしょう。

The Weighing of the Heart

ボーカル導入という大きな転換点になったアルバムです。

前作から引き続き、楽器の音色を十分に魅せるような楽曲になっています。
また、 中央アジア、インドネシア、南アメリカ、アフリカの伝統音楽の影響を受けて制作されており、前作までのヨーロッパ的な森林を思わせるサウンドからは転換しています。

まず、アルバム全体として特定の風景を想起させるものではありません。
ある種のセンチメンタルを含んだ様々な透明感が、浮かんでは消えていくようなサウンド・スケープを構成しています。

アコースティックギターやグロッケンのようなおなじみの楽器だけでなく、ガムランや打楽器などがフィーチャーされているのも特徴です。
アジア的な楽器が生み出す旋律は決してアジア的でなく、そのアンバランスさも危うい魅力を放ちます。

そして、Colleen本人のウィスパーな歌声も暗闇に浮かぶほのかな白光を思わせる求心的な魅力があります。

危ういバランスであるがゆえの透明感、とでも言えば良いのでしょうか。
今にも割れてしまいそうであるがゆえに淡く輝く刹那の美しさがあります。

ちなみに本作のタイトルThe Weighing of the Heart(心臓の重さ)は古代エジプトの神話からの引用です。
使者は冥界の入口で心臓の重さを測られ、正しい生き方をしてきた人の心臓は羽よりも軽くなる、というものです。

本作は、このタイトルを見事に体現しているアルバムでしょう。

Captain Of None

彼女の大きな音楽的影響源であるダブを前面に出した作品です。

1stを思わせるほどに強烈なエフェクトがかかっています。

ただ、いわゆるジャマイカ音楽的な影響は感じられません。
楽曲部分の基礎部分は前作までの流れを踏襲しています。
目新しい部分としては時折ベースを強調することとトライバルなパーカッションが入るくらいでしょうか。

だからこそ強烈にダビーなエフェクトが印象的です。
妖精的な旋律はダブの魔法にかかり、陶酔的な揺らめきを持ったとろけるような波へと姿を変えます。
ふわふわと揺れるように夢見心地で、大きな海で揺蕩っているような感覚になります。


エフェクトがかったヴィオラ・ダ・ガンパ、
時折姿を見せるトライバルなパーカッション、
Colleen本人による囁くようなボーカル、
全てが反響の蒼い海に溶け落ちて、聴く者をいざなうような心地よい波のようになります。

Colleenの作品の中でも突出した個性を持つアルバムと言えるでしょう。

A flame my love, a frequency

またしても異色作になった6枚目は、パリの同時多発テロにインスパイアされて制作された一枚です。

驚くべき点は全面的なエレクトロニクスの導入でしょう。
シンセサイザーが主軸を担い、今までとは違う音像を創り上げています。

特徴的なのは、

  • まず、非常にミニマルであること
  • ただし、旋律は初期のように妖精的であること
  • そして、音色がシンセなのでポップでSFっぽい雰囲気でもあること

ということでしょうか。

上記個々のファクターはそれほど珍しくないのですが、これが合わさると非常に独自のサウンド・スケープへと様変わりします。

シンセの音色は跳ねるようなポップさと夢幻な揺らめきを兼ね備えています。
しかし、その音色は必要最低限かつミニマルで、まるで荒廃した未来都市の歩く足取りのようです。
一方、Colleenのふわふわと漂うウィスパー・ボイスには、夢見がちで終末的な甘美さを感じます。


荒廃した未来の世界、人けのない街の片隅に落ちている古びた絵本。
それを初めて読んだ未来の子供は、きっと本作のような心象風景を心に鳴らす気がします。

まとめ

一通り語りましたが、やはりイメージは掴みにくいと思います。

ただ、Colleenはアルバムごとに明確なサウンド・スケープがあります。
ここでは各アルバムのサウンドスケープを分かりやすく言葉にしてみました。

いかかでしょうか。
完全に主観です。悪しからず。

まとめ Colleenのアルバムは全て独創的 そして何よりも辺境的

Colleenは非常に独創的な音楽家だと改めて感じました。
オリジナリティもそうですし、アルバムごとに大きくサウンドが変化するのも素敵です。

ポスト・クラシカルに括られることも多いですが、Colleenはもっと非正統派的な存在だと思います。
例えば、ポスト・クラシカルがお城の音楽なら、Colleenの音楽は森の妖精が奏でる音楽。
辺境的な音楽と言えるのです。

そして、辺境には不思議なことが起こるもの。
お城にいては見られないものが、Colleenのサウンド・スケープには息づいているのです。

森に迷ったお姫様を気取ってみるのも、また一興です。

それでは。

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