Chonというバンドについて。  「スマブラやろうぜ! カリフォルニアで!」な初期衝動。 



こんにちは。

Chonはカリフォルニア出身の3ピースロックバンドです。

サウンドとしてはMath Rock(あるいはプログレ)にカテゴライズされるものになるでしょう。

しかし、典型的なMath Rockバンド達とは音楽的な出自が大きく異なるため、非常にオリジナリティにあふれる音楽性を発揮しています。

Fuji Rock 2019への出演が決まっている彼等について、少し語ります。

Chonというバンドについて その音楽はMath Rockか?

Math Rockはポストロックのサブジャンルです。
特徴としてはテクニカルな演奏と精緻な曲構成、そして楽曲から漂う緊張感が挙げられるでしょう。
しかし、このChon、テクニカルさや緻密さはあれど緊張感はありません。

その代わり、彼等の故郷カリフォルニアを連想させる爽快感があります。
同郷のスケーターバンド達に通じるような、からっとした陽気の中を疾走していく感じですね。
しかも、Chonのサウンドはさらに独特です。
太陽や海辺を思わせる爽快感に重ねて、現実離れしたキラキラ感があるのです。


おそらく、彼等がゲーム・ミュージックから影響を受けているからでしょう。
彼等はスマブラ、ポケモン、ゼルダなどへの深い愛を公言しています。
曲を書く際のインスピレーションでもあるようですし、ディープなゲーマーのようです。
というか、以前のツアーでは演奏終了後にステージ上でプロのプレイヤーにスマブラをさせていたこともあるそうです……。

美しいグラフィック。楽しいバトル。ワクワクする物語。
きっと子供のころから夢中でプレイをして、それが血となり肉となって彼等の音楽に染み込んでいるのでしょう。

その結果、ドアの中で楽しむニンテンドー的キラキラ感と、ドアの外に広がる青空と水平線が織り成す開放的爽快感が混ざり合っています。
純粋な好奇心に駆り立てられてどこまでも突き進んでいくような感覚、といえばいいのでしょうか。
「楽しくて楽しくて仕方がない!」って思いながら冒険しているような。

Chonのアルバムについて GrowとHomeyでMath Rock?

2019年6月現在、3枚のフルアルバムをリリースしています。
作品ごとに少しだけ語りたいと思います。
ただ、言葉だけでは分かりにくいと思うので、成分分布図を作ってみました。

完全に個人的な主観ですが……。

【1st album】Grow

最初に心を奪われるのは、若々しいエネルギーです。
しかし、それはいわゆる思春期的な苦悩や怒りではありません。
その前段階というべき小学生的な初期衝動です。

友達と遊ぶサッカー、一緒に遊ぶビデオゲーム。
好奇心やワクワクが爆発しそうに詰まっている曲の数々が次から次へと飛び出してきます。

それに忘れてはいけないのがノスタルジックな一面です。
下校中に虹が見えたときとか、
帰りのチャイムが鳴った夕方とか、
あの娘に手を振って家路に着いたときとか、
そんな記憶の深いところを喚起するような、純朴さが目一杯に詰まっています。

また、プログレッシブ的・Math Rock的なバカテクっぷりも素晴らしいです。
そして、メカニカルなギターリフも打ち鳴らされるドラムスも、その全てが「テクニックを見せつけてやるぜ!」的なマッチョさではなく、ただただ無垢で魂を奏でることに注力されています。

爽快感もあるんだけど、ゲームミュージック的で純粋な好奇心でもあるような。
本作はChonの魅力をド直球で投げつけているマルバムです。
文化系少年のからっとした側面だけを打ち出したような、優しい解放感に満ちている傑作でしょう。

【2nd album】Homey

ノスタルジックな要素が強くなっています。

前作よりもキラキラに。
楽曲を覆うシンセ・エフェクトの層は厚めに。
リラックスしたムードが強まり、ゴツゴツした感触は少なくなり。
演奏はさらにテクニカルになれど優しい雰囲気はより深まり。
西海岸的なサウンドスケープに幻想的な靄がかかり、トロピカルな非現実感が漂っています。

また、いわゆるバンドサウンドを離れたエレクトロニカ・ヒップホップ的な要素が強い楽曲も見受けられるの印象的です。

そして、その変化した要素全てがノスタルジーを喚起していることが特筆に値します。
アルバムジャケットのようにどこかおぼろげで、二度と戻れないどこかを見ているような気持ちにさせてくれます。

繊細な少年的感受性を前面に出しているとも言えるでしょう。
想像力を働かせるようになって、世界の見え方が少し変わり始めているような。
あるいは世界の不思議が目の前に現れ始めたような感覚、とでもいえばいいのでしょうか。
今にも何かが変わり始めそうな予感に胸が高鳴ります。

前作のように少年性の美しい部分を切り取っている一枚です。
でも、前作より少しだけ大人になっていますね。

Chon(3rd album)

Chonの武器の一つである、無邪気なノスタルジーを最大限に煮詰めたような美しいアルバムです。
サウンドはよりメロウになり、公園に向かって駆け出すようなエネルギーは影を潜めています。

サウンドの特徴としては、

  1. シンプルなサウンド
  2. メロウでノスタルジック

の2点に尽きるでしょう。

スタイルについては、前作のような多彩なジャンルを取り込むスタイルではなく、飾り気のないバンド・スタイルに戻っています。
戻っているというか、1stよりもさらにシンプルですね。
今までのような勢いよりも、ゲーム音楽仕込みの耳触りの良いメロウさを打ち出すことに主眼を追い提案す。
彼等の特徴だったバカテクも無邪気に遊びまわるような存在感ではなく、あくまでも隠し味として顔を出す程度です。
美しく描き出されたノスタルジー、その素晴らしい絵画を楽しそうに見せ「どうかな? 素敵じゃないか?」と、問いかけられているようなサウンドです。
ただ、1st、2ndよりもさらに大人になっているかというとそういう感じでもないと思います。
根底にあるのはあくまでも純粋さです。

ただ、1st,2ndとの決定的な違いは微かな物憂げさです。
子どもだって、無邪気に楽しくしたいときもあればアンニュイな気持ちになるときだってあるでしょう。

塾に行くのが嫌でゲームをずっとやったり、
習い事の先生がイヤで仕方なかったり、
同じクラスのあいつと話をするのが本当に嫌だったり、
気になるあの子が、違う人と仲良さそうに話をしていたり。

自分の心に芽生えた孤独の扱い方をまだ分からない、あのもどかしい切なさ。
そんな気持ちを、あの頃の日々を追想させてくれるアルバムです。

Homey(仲間)とGrow(成長)していくカリフォルニアの無邪気なChon

Chonのサウンドは非常に多彩であり、オリジナリティに富んでいます。
確かにその点においても魅力的です。

しかし、彼等の魅力の本質は無邪気さだと思うのです。
大人になると心の隙間から入り込んでしまう怒りや絶望、社会的評価、ナルシズム、打算。

彼等のサウンドにはそんな雑味がありません。

純度100%の好奇心だけをエネルギーに、どこまでも突き進む姿を見せてくれる。
そんな非常に愛おしいバンドだと思います。



それでは。

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