まだ見ぬ世界と、まだ見ぬ未来を  ブライアン・オールディス / 寄港地のない船

こんにちは。ツリーズ鮭舞です。

見たことのない場所を見てみたい。そう思うのは人間の性なのでしょう。

そんな欲求を掻き立てる一冊がブライアン・オールディスの『寄港地のない船』です。

ジャンルとしてはSFになるのでしょう。

しかし、注目すべきはその個性的な世界設定です。

舞台は巨大な宇宙船の内部です。しかし、かつての高度な文明は失われ、室温は高く、背の高い植物が繁茂し、蠅がうんざりするほど飛び回っています。

人々は狩りをし、原始的な生活をしています。船がどこから来てどこに向かうのかも朧な伝承で伝えられているだけです。

主人公ロイの集団は自分たちの暮らす場所から離れようとはしません。部族の中では差別が横行し、一部の権威ある人間以外とそれ以外の格差は広がっています。

ギスギスした雰囲気が蔓延しています。

ロイは船内でうろつく豚の狩りで生計を立てています。しかし、その相場が下がり生活は苦しく、妻との仲も悪くなっていきます。追い打ちをかけるように、狩りの時、妻を未知の部族にさらわれ、鞭打ちの刑に処されてしまいます。そんなとき司祭マラッパーから船を支配するために旅立とうと誘われ……。

というお話です。

宇宙船の中がジャングルのようになっていて、そこで乗組員の子孫がそこで原初的な生活をしています。面白いと思いませんか?

また、本作は1958年に出版されています。60年前! 未来が舞台なのに、古いレコードを聴いているようなビンテージな雰囲気が漂うのもたまらないですよ。

でも、面白いのはそういう世界観だけじゃないんです。このお話全体が深い比喩が込められていて、それが本当に読み手を勇気づけるものなんです。

完全に文明が失われたぼろぼろの状態で航行する宇宙船。それは、どんなに最悪でも進み続ける人生の比喩として描かれています。

だから、ラストシーンで描かれる、そんなぼろぼろの人生から脱出をする方法が面白いんです。

ああ、もうそうするしかないのかって。

今、人生に困難を抱えていて、少し見知らぬ世界に旅立ってみたいな、という方にお勧めです。きっと、自分を強くする何かを現実世界に持ち帰ることができるはずです。


寄港地のない船 (竹書房文庫)

それでは、また。


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