図説 エジプトの死者の書/村治笙子・片岡直美=文 仁田三夫=写真


こんにちは。


『図説 エジプトの「死者の書」』は古代エジプトにおける葬儀や埋葬の際に読経され、墓に埋葬された経文「死者の書」に関する書物です。

「死者の書」は、エジプト人の死生観や葬儀の流れについて分かるだけでなく、その美しい装飾により多くの人を惹きつけてきた史料です。

本書は「死者の書」の内容に沿いつつ、葬儀の流れや死後に待ち受ける死者の困難などをカラー写真をふんだんに取り入れ、分かりやすく内容をまとめています。

ここでは個人的に面白かったところについてまとめました。

『図説 エジプトの「死者の書」』 の良いところ カラー写真がいっぱいでとにかく分かりやすい!

本書は序章から六章まで章立てされていますが、内容は主に三つに分けることができます。

  1. 「死者の書」の成立過程、エジプト人にとって「死者の書」が持つ意味
  2. 死後、死者が進まなくてはならない冥界・来世への旅路
  3. 来世とはどんな場所なのか

といったところです。
この流れに沿って「死者の書」の呪文を抄訳的に紹介してくれます。

本書は墓室や「死者の書」の写真、豆知識的なコラムを交えているので、読んでいても飽きることもな非常におもしろいです。

では、順番に見ていきましょう。

1. 「死者の書」の成立過程、古代エジプト人にとって「死者の書」が持つ意味

「死者の書」の成立過程

「死者の書」の起源は古王国時代のピラミッドテキストまでさかのぼることができます。

古王国時代において、王は死後も人々に影響を与えることができると信じられていました。
それゆえ、王にきちんと昇天してもらうため、王の墓であるピラミッドに様々な呪文を刻んでいました。

その後、中王国時代には呪文が刻まれるのがミラミッドではなく棺になり、しっかりとした棺を帰る者にも呪文の利益が与えられるようになります。

第二中間期の頃から、神殿の文書庫から必要な呪文を書き写した「死者の書」が登場します。
そして、新王国時代にはハピルスだけでなく調度品や私人墓の壁画にも書かれるようになります。

徐々に呪文の利益に預かれる人々の階層が広がっていったのです。

その後「死者の書」は古代エジプト文明の終焉プトレマイオス朝まで用いられました。

古代エジプト人にとって「死者の書」が持つ意味

本書では古代エジプトで父親を亡くした長男をモデルにして、「死者の書」がどんな意味を持っていたのかを描いています。

葬儀を取り仕切る長男は、ミイラ処理や副葬品など父親の好みと現実的な予算や時間(ミイラの腐敗等)などと折り合いをつけながら選んでいきます。

そして、その中に「死者の書」があり「父さんは信仰の厚い人だったから」という理由で最上のものを選んでいます。

2. 死後、死者が進まなくてはならない冥界・来世への旅路

死後の旅路

死後、死者は葬儀において冥界に旅立つための準備を施されます。

葬儀の最後に行われる遺体の「口開きの儀式」の際は、死後の世界で死者が口を使えるようにするための呪文が唱えられたました。
暗闇に包まれた死後の世界で灯明を用意する呪文や、死後の世界で労働を肩代わりしてくれるウシェブティと呼ばれる人形を動かす呪文も用意されていました。

その後、困難を乗り越えて太陽神ラーの船へと乗り込みます。
その聖船に乗船するための呪文では昼夜を繰り返す太陽の動きが船に喩えられています。

死者は太陽神とともに天空を巡り、死者の世界へと辿り着きます。

オシリスの神の死者裁判

死者は旅の最後で、冥界の神オシリスの館に辿り着きます。
そして、最大の試練にぶつかります。


数多の神々が列席するなか、生前の行いを裁かれるのです。
死者はそこに足を踏み入れる前にオシリスの名を唱え(相手の名を知っていることは相手を知ることになる。いわば神を凌駕するための呪文)、「二つの真理の間」に足を踏み入れます。

そして、「生前の自分は正義に反することはしなかった」と告白します。

その最後に自分の心臓を心理を象徴する羽根とはかりにかけます。

もし釣り合わなければ告白は嘘であると神々からみなされ、二度目の死を迎えることになります。

そして、釣り合ったのであれば、ようやく来世へと足を踏み入れることができます。

3. 来世とはどんな場所なのか

楽園への入口

しかし、まだ旅は終わりません。
「イアルの野」と呼ばれる来世の楽園に渡るためには、川を渡らなくてはなりませんでした。

超えるのが難しい中洲を渡られるだけのスペックを持った船を用意させるための呪文も「死者の書」にはありました。
死者は自力で川を渡ります。船の各部の名前や櫂の漕ぎ方なども知識がなければ、楽園にはいけませんでした。

楽園での生活

「イアルの野」での生活は基本的には生前と変わらないものでした。
社会的にも安定した立場を気付いた壮年の姿になり、生前と同じ仕事につきました。
ただし、副葬品であるウシャブティに頼めば労働は肩代わりしてもらえました。
さらに言えば、魂だけの姿になって生前の供物を受け取ることもできました。

葬儀に際してしかるべき手続きさえ踏んでいれば、死後の生活は安泰だったと言えるでしょう。

終わりに 『図説 エジプトの「死者の書」』の魅力は活き活きとした遺跡やパピルスの写真を軸に死生観を見せてくれること

いかがでしたか。

『図説 エジプトの「死者の書」』の良いところは、カラー写真が豊富にあって死後の世界を具体的にイメージしやすいところだと思います。
何も考えずにぱらぱらめくっているだけでもワクワクします。
(文字だけではどうしても伝わりませんが……)

また、コラムなどにはマニアックなものもありディープな方でも楽しめます。
全訳されている呪文もあるので呪文マニアの方も必見です。



それでは。

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