『バフタンの王女』。異国の王女を救うエジプトの神とファラオ

こんにちは。

紀元前文学第36回は古代エジプトの『バフタンの王女』です。

病に倒れた異国バフタンの王女に、エジプトのファラオ ラムセス二世が救いの手を差し伸べるというお話。


パピルスではなく石碑に刻まれている物語であることや、その石碑をヒエログリフを解読したシャンポリオンが発見したことなど、お話以外にも珍しい属性が色々ある作品です。

第26王朝からプトレマイオス朝期にかけての成立とされているので、紀元前7世紀から紀元前1世紀まで。エジプトの文学作品としてはかなり新しいモノになります。

『バフタンの王女』:あらすじ

主な登場人物

  • ラムセス二世 ファラオ。エジプトでも超有名ファラオ。
  • ネフェル・ラー バフタンの王女。ラムセス二世に気に入られて嫁入り
  • ベントレシ バフタンの王女。ネフェル・ラーの妹。病気になる
  • バフタンの領主 バフタンの領主。節々から普通の人っぽい気配がする

ネフェル・ラーの嫁入り

たくさんの国々の王がラムセス二世へ金銀ラピスラズリなどの献上品を持ってくる場面から物語は始めます。バクタン(バクトリア:中央アジアだとする説も。ラムセス二世の支配圏はそれほど広大ではないのですが、彼の力がそこまで及んだという虚偽の逸話がタキトゥスなどによって語られています)の領主がやってきます。

領主が連れてきた長女ネフェル・ラーがラムセス二世に見初められ、エジプトに残ります。大皇妃として誰よりも愛される妻になります。

ベントレシの病気

ラムセス二世が父王のための儀式を執り行っているとバフタンの使者がやってきます。ネフェル・ラーの妹ベントレシが重い病気になってしまったため、優れた知識や神の加護を持つエジプトに助けを求めてきたのです。

最初、ラムセス二世は学者・役人・書記を送ります。バフタンについた学者たちは物の怪が取りついていることが病気の原因であると突き止めます。

知らせを受け取ったラムセス二世はホンス神像に、「貴方をバフタンへ送っても良いか」と伺いを立てます。像が合点の合図をラムセス二世に送ったため、ホンス神像は大船でバフタンに届けられます(中央アジアに大船で……?)。

バフタンに着くと像の魔力はベントレシに移されます。そのおかげでベントレシの中にいた物の怪はすぐに逃げ出し、ベントレシはすぐに回復しました。

ホンス神像の帰還

ベントレシの領主はホンス神の像を返すのが惜しくなり、3年9カ月手元に像を置いていました。しかし、夢の中でホンス神が金色の鷹になり、エジプトの方角へ飛び去って行く夢を見ました。

もう像から神の力が失われたことを知ったベントレシの領主は、ホンス神像をたくさんの贈り物と共にエジプトに送り返しました。

個人的な感想

病気の原因が分からない時代というのは大変だったんだな、と思いました。物の怪って、要するに病気の原因を擬人化をしているわけです。ウイルス・病原菌という概念は当然なかったから、自分たちと同じような存在を想像/創造するしかなかった。本当の姿を想像するだけの素材が彼等にはなかったのです。

『バフタンの王女』では神の力であっという間にベントレシは全快していますが、現実は違ったはずです。立場の低い国からの要請に応じて神像を送ったのに貴人は亡くなってしまった、みたいなシチュエーションもあったのかもしれません。その時、エジプト側はどんな言い訳をしてたんでしょうか。

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