Battlesのアルバムについて。強靭精緻なダイナミズムと中毒性の高いポップネス

こんにちは。

Battlesは2002年にニューヨークで結成されたロックバンドです。

https://www.washingtonpost.com/rf/image_1484w/2010-2019/WashingtonPost/2015/10/13/Weekend/Images/wk-battles1016-1.jpg?t=20170517

その音楽性を表すのにはマスロック、エクスペリメンタル・ロック、ポストロックなどというジャンル名が使われることが多いようです。

高度・精緻かつアグレッシブ/ハードコアなサウンドと求心力と中毒性の高いポップさが特徴と言えるでしょう。
※初期のEPは少し違うかもしれません。


2021年5月現在、Battlesは4作のフルアルバムをリリースしています。
本記事ではその全てを見ていきます。

Battlesのアルバム一覧

これからリリース順にBattlesのアルバムを見ていきますが、文字だけでは分かりにくいと思って相関図を作成してみました。

では、本題に入りましょう。

(1st)Mirrored

前史:リリースされるまで

Battlesは元Don Caballero~Storm & StressのIan Williams、元Helmet等のJohn Stanier、元LynxのDave Konopka、実験音楽家のTyondai Braxtonというマスロック・ハードコア界隈で名を馳せた顔ぶれが集って結成されました。

しかし、John Stanierによれば、Battlesを結成した理由は「お金を稼ぎたい」とか「有名になりたい」といったものではなく、ショウをすることも頭になかったそうです。

とはいえ、それだけの才覚があれば否応なく頭角を現すことになったのでしょう。
その2年後の2004年にはTras,EP B,EP Cをリリースし、Warp Recordsと契約してデビュー作Mirroredをリリースすることになります。

アルバムの魅力

日本のディスクガイドにこのアルバムの登場によりポストロックバンドが「Battles以前/以降」で分けられる、とまで称されたほどのインパクトを誇ったアルバムです。

しかし、そんな激賞の言葉に見合うだけのクオリティを有していると多くの人は認めるのではないでしょうか。

切れ味鋭いギターリフと変拍子を織り交ぜたヘヴィなドラムスがぶつかりあって四方八方にぶっ飛びまわるマニア垂涎の展開を、極めて高い求心力と共に炸裂させていきます。

複雑怪奇によじれるリズム、
技量確かなメンバーのぶつかり合いがもたらす熱量、
どこに向かって楽曲が進むか分からない緊張感、
精緻で強靭なマスロック的ダイナミズム。
どこから始まりどこに向かうのか分からない暴走プログラムのような予想不可能性には息を吞むしかありません。

それでいてキャッチーな要素も十二分に兼ね備え、祭りの渦に人々を引き込むような求心力もあります。
聴く者の血潮に訴えかけるようなシンプルで熱い衝動は、なかなか魅力的です。


マニアックな変態性とキャッチーな大衆性という両柱を兼ね備え、王者の風格を敢然と漂わせています。

窓口の広い「熱さ」が本作Mirroredの大きな魅力であることは間違いないでしょう。

(2nd)Gloss Drop

前史:リリースされるまで

高い評価を得た前作Mirroedに続くアルバムの制作中にTyondai Braxtonが脱退してしまいます。

インタビューを読むと当時の状況を「最悪」と評していることもあり、Battlesの内情はボロボロだったのかもしれません。
しかし、残されたメンバー3人は75%まで完成していたマテリアルを全て放棄したうえで、バンドの続行を宣言します。

そして、「バンドの健康状態がベターになった」と述べているのも、本作を見るうえで注目すべき変化なのかもしれません。

アルバムの魅力

3人組となったBattlesが作り上げたのが2ndアルバムとなる本作Gloss Dropです。

前作の魅力が個性あふれる4人の殴り合いだったとしたら、本作は才気あふれる3人が放つ重たい斬撃の連続といったところでしょうか。

マスロック的な才気、
ヘヴィなダイナミズム、
中毒性の高いキャッチーさ等々、
以前からの魅力に変わりませんが、よりストレートなロックサウンドの雰囲気も感じさせます。

他一際音楽的性向が異なっていたTyondai Braxtonが脱退したことの影響の大きさが滲み出ているのかもしれません。
前作のように各メンバーの個性がコントロール不可能になるスレスレでぶつかり合っているというよりも、高い熱量を保ちながらもある程度は同じ方向性を向いているように感じます。

敢えて誤解を恐れずに言うなら初期パンクのような、衝動的な熱量がそこにはあるというべきかもしれません。
ダイナミックであることは前作と全く変わらないのですが、その質は変化しているように思います。


また、Blonde RedheadのKazu Makino、BoredomsのEYE、Matias Aguayoなど多彩なゲストボーカルを迎えることによって多様性とポップさを導入することに成功しています。

ポップでハードコアな音塊がダイナミックにぶつかり合う、力強い魅力を秘めています。

キャッチーなロックサウンドという切り口でみたら本作の魅力はとても深く、楽しく聴けるものだと思います。

(3rd)La Di Da Di

前史:リリースされるまで

本作のレコーディングに際し、3人体制のBattlesが馴染んで楽になったとJohn Stanierは考えていたようです。
「全員がそこにいたくて、作業したかったんで、ずっとスムーズに進んだ。短い時間の中ですごくいろいろなことができたんだ。すべてがバッチリだった」と述べています。

関係性の安定がアルバム制作の安定に繋がっていたのかもしれません。

アルバムの魅力

分厚い熱量で押しまくっていた前作Glass Dropに対し、本作La Di Da Diは完成度の高いクールさが魅力になっています。

マスロック的でザクザクとした音塊はソリッドを増し、
サウンド全体の無駄な油分は削ぎ落され、
上空から滑空してくる鷹のような、余裕を漂わせるアグレッシブさを放っています。

3人体制になって2作目ということもあり、練度がだいぶ高まっているのでしょう。
隙が無く、タイトで、相変わらず中毒的なキャッチーさもあって。
それに、どこかトロピカルな雰囲気もあるのも印象的です。


全編インストゥルメンタルなのも特徴でしょう。
実験的なニュアンスを多分に滲ませながらも楽しみやすい雰囲気になっています。

様々なグルーヴを織り交ぜた血潮滾らすビートが七変化的に姿を変えていき、そのうえで踊るエレクトロニクスや生楽器が揺らめき、ぶっ飛び、華麗にぶつかり合っていきます。

3人のメンバーの息がぴったりはまっているような、ぶっ飛びながらも調和を感じさせるアルバムとも言えるかもしれません。

(4th)Juice B Crypts

前史:リリースされるまで

蜜月のようにも追われた3人体制のBattlesですが、今度はDave Konopkaが脱退をしています。
その理由については述べられていませんが、少なくともTyondai Braxtonの時よりも穏便であったようです。

インタビューの文面からは2人体制への移行を淡々と行ったように感じられます。

アルバムの魅力

Battles的で奇抜なオリジナリティはさらに深化し、いわゆるマスロックのカテゴリーからはかなり離陸しているアルバムであるように感じます。

変幻自在に姿を変える力強いドラムスの上でギター、キーボード、エレクトロニクスが切れ味鋭く飛び交いながら楽曲は展開していきます。

前作La Di Da Di同様、本作Juice B Cryptsは上空で滑空する鷹がぶつかり合うような鋭く強靭なアグレッシブさを魅力としています。
ただ、ゴリゴリとした音塊・分かりやすいハードコア性は鳴りを潜め、エレクトロニクス的なアート性が前面に出ているように思います。


飄々としている、とも言い換えられるかもしれません。

民族音楽・ヒップホップ・ジャズなどのグルーヴもしなやかに取り入れ、華麗にBattles流ロックサウンドへと昇華しています。

熱量全開というよりも、聴き手を翻弄するような巧みな展開を余裕たっぷりに繰り広げていることが本作のキモになるかと思います。

楽しく、親しみやすく、それでいて斬新さもあって。
自らを革新し続けるBattlesらしい先鋭性をエンジンにして辿り着いたオリジナリティが詰まっています。

主要参考文献及びサイト:Battlesのアルバムについて

主要参考文献

主要参考サイト

https://en.wikipedia.org/wiki/Battles_(band)

https://skream.jp/interview/2015/09/battles.php

https://ototoy.jp/feature/20111211

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