Aucanのアルバムについて。バトルズ直系のマスロックから、ビートミュージックへの華麗な転身

こんにちは。

Aucanは2007年に結成されたイタリア出身の3人組バンドです。

https://www.nordkeyboards.com/sites/default/files/styles/artist-profile-image/public/files/artists/europe/italy/Aucan.jpg?itok=pq0hkMz-

Battlesと共鳴するマスロック/ポストロックで鮮烈にデビューした後、ダブステップ/ビートミュージック/ベースミュージックへと大胆な方向転換を図った姿に驚きを覚えた方も少なくないのではないでしょうか。

どの音源においても共通しているのは、知性的ながらも強さを感じさせるサウンドでしょう。

2022年2月現在、Aucanは3作のフルアルバムをリリースしています。
本記事では、その全てを紹介します。

Aucanのアルバム一覧

これからリリース順にアルバムを見ていきますが、文字だけでは分かりにくいと思って相関図を作成してみました。

では、本題に入りましょう。

(1st)Aucan

ロジカルで荒々しく、インテリジェントで攻撃的。ゴリゴリとしつつも切れ味鋭い、マスロックの魅力を凝縮したサウンドが炸裂しています。

強靭なバンドサウンドを軸としつつも、エレクトロニクス/シンセを大胆に取り入れることで聡明さも発揮。ソリッドでヘヴィな破壊力を保ちつつ、タイトに入り組むビートやリフ。緻密な構成美とダイナミックな躍動感が複雑に交錯して、うなりを上げるような迫力を創り上げています。

マスロックらしい硬質さがたまらないエレクトリックギター、実験的なニュアンスが強いシンセ、タイトに低音を響かせるベース、変拍子を織り交ぜつつ複雑で重たいビートを刻むドラムス。肉体感とエレクトロニクスの合体が、Battlesを彷彿とさせる強靭さと知性を放っています。しかし、本作のほうが生々しさは強めです。エクスペリメンタルな雰囲気もありますが、あたまでっかちになることもなく、ストレートな分かりやすさ/初期衝動がアルバム全編を駆け抜けています。

パワフルでストイック、それでいて緻密。攻めのサウンドが最初から最後までバシバシとキマっています。凄みがあるのにスマートさが失われることが一切ないのも、魅力的なポイントでしょう。

精密な展開、飛び交う音塊、うなりを上げるタイトなビート。破壊力と洞察力が核融合を起こしたような、エネルギッシュなアルバムです。

なお、本作のマスロック路線をもっと楽しみたい方はEP『DNA EP』のチェックもおすすめします。

(2nd)Black Rainbow

前作からの劇的に方向転換、ダブステップ/ビートミュージック/ベースミュージックへと接近したアルバムです。

接近、というか、時折マスロックにも通じる気がする重たさを見せることはあれど、基本的には実験的/文学的なニュアンスも強い、フロアユースなサウンドになっています。個人的にはこちらも好きなのですが、「うむむ」と感じた方も多かったかもしれません。

煙たい幻想性と真摯な知性を湛えたエレクトロニクスがふつふつと揺らめき、鋭くうねるシンセ、時折姿を見せる重たいグルーヴを感じさせるエレクトリックギター、一気に存在感を増した不安定なボーカル、生ドラムと打ち込みが交錯するエッジの効いたビート。時にロック的、時にヒップホップ的な雰囲気を取りこんだ雑食型ビートミュージックが展開しています。

ほのかにダークで幻想的、そしてダウナーでソリッドなビートが駆け抜けるアブストラクトなサウンドが変幻自在/縦横無尽に姿を変えながらアルバムは進んでいきます。

ボーカルがあるぶん分かりやすくエモーショナルな瞬間が多いのも特徴です。元々はロックバンドだったが故の手癖みたいなものなのでしょうか。


大胆にうねるビートとアンニュイで煙たいサウンドが織りなす、ダークなクラブミュージックを聴けるアルバムです。

(3rd)Stelle Fisse

冷たくも優美な質感が印象的な、ポスト・ダブステップの匂いも強くなった作品です。

ハードな雰囲気は鳴りを潜め、知性的/アブストラクトで煙たい側面が強く現れています。かつてマスロックバンドだった面影は皆無、完全にそちら側のサウンドになっています。


ダウナーなビート、灰色感のあるシンセ、物憂いグルーヴを醸しだす低音。ベースメント的な冷たさ・無機質さがうごめく音響空間にはかすかな微熱が絶えず渦巻き、聡明な響きを余韻に残しながら、次から次へと新しいインテリジェントなビートを紡いでいきます。

静けさの中、不意に現れ、蠢き、もがき、踊り、消えていく音響たち。時に沈み込むように、時に鋭いビートを刻み、揺蕩うように形を変えながら、煙たくも聡明なテクチャーを紡いでいます。

一定の温度感、常に漂う渋みのあるツヤ/色気、レプタイル的な凶悪さを内に秘め、淡々と音が生まれ、連なり、揺れ動き、消えていき、そしてまた次のトラックが始まっていく。

そんなダウナー気味の安定感が、本作の魅力の本質かもしれません。

物憂くて、煙たくて、芳醇。知性的な電子音楽を楽しめるアルバムです。

主要参考サイト

https://www.discogs.com/ja/artist/1609939-Aucan

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