ヒンディー語の香り豊かな詩情と轟音ポストロックの壮麗さが生み出す雄大さに、畏敬の念を。  Aswekeepsearchingというインドのバンドについて。


こんにちは。

Aswekeepsearchingはインドのアフマダーバード出身のロックバンドです。

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ジャンルとしては、一応は轟音ポストロックにカテゴライズされるかと思います。
しかし、ヒンディー語やウルドゥー語を(2nd以降ではインドの民族楽器も)を楽曲に盛り込んでいる点が彼等のオリジナリティとして挙げられます。


彼等はバンドのグランドコンセプトとして「希望、恐怖、落陽、谷、光」を挙げており、雄大な自然や深い感情を感じさせる展開が多いのも特徴です。

また、最も対外的に成功しているインドのポストロックバンドでもあるようです。

2020年2月現在、彼等は3枚のフルアルバムをリリースしています。
本記事ではその全作品について語ります。

Aswekeepsearchingのバンド結成時の経緯とアルバム相関図

バンド結成の経緯と彼等の影響源

Aswekeepsearchingは主要人物であるUddipanとShubhamのベッドルーム・プロジェクトとして結成されました。

当時の彼等はポストロックというカテゴリーそのものを知らなかったそうですが、彼等はポストロックとしてカテゴライズされるデモ・トラックを作っていたそうです。

当時のインドはUntil We Last,Lounge Piranha,The Eternal Twilightなどの活動により、ポストロックの認知度が徐々に上がりつつありました。
そんな環境もあったのでしょう、Aswekeepsearchingのメンバーはポストロックというカテゴリーを知り、その影響を受けていくことになります。


影響を受けた音楽家としてGod Is An Astronaut, Caspian, This Will Destroy You, Mogwai, Mono, Maybeshewillの名前が挙げられていました。
特にGod Is An Astronautの名前は必ず最初に挙がっており、フェイバリットなのかもしれません。

そして、ドラマーとベーシストを探しているうちにバンド名(Aswekeepsearching)が決まり、メンバーが揃うと周囲の都市へライブをするために繰り出す日々を送るようになりました。

また、2014年中にロシアのレーベルからEPをリリースしています。

アルバム相関図

本記事では各アルバムごとに語っていきます。
ただし、文字だけでは分かりにくいと思い、相関図にしてみました。

それではリリース順に見ていきましょう。

Aswekeepsearchingの全アルバム

(1st)Khwaab

アルバムがリリースされるまで

メンバーによればバンド結成地であるアフマダーバードは何もない田舎町だったそうで、そんな環境から脱出するために必死に働いてお金を貯めていたそうです。
他の都市でライブをするために節約し、演奏に出かけては空っぽのポケットで家に帰る。
そんな日々を過ごしていたと後に振り返っています。

本作の収録曲もライブで演奏した曲を何度もリライトしながら作り上げたものだと述べています。
きっと、成功を夢見て必死に足掻いていたのでしょう。

本作Khwaabは、Aswekeepsearchingが歩んできた過去に捧げられた作品なのだそうです。

アルバムの魅力

最も真っすぐなエネルギーに満ちているのが本作Khwaabでしょう。

叙情的なギターアルペジオと美しい轟音バーストを巧みに織り交ぜるポストロック的楽曲にヒンディー語の伸びやかなボーカルが載せられ、ゆったりとしたカタルシスを構築しています。

ただし、単純に「静」「動」を切り替えるのではなく、複雑な色彩のスペクトラムの間を行き来しているのが彼等の特徴です。

ミドルテンポで温もりを感じさせるドラムス、
優しげなグルーヴ感を生み出すベースライン、
凛然としたエレクトリックギターの音色、
楽器の一つとして楽曲に花を添える、男性ボーカルのエモーショナルな歌声。
力強い感情が込められていますがそれを爆発させるのではなく、澄んだ音色の中で浮遊しているような穏やかさを感じさせます。

慈しみのような温もりを感じさせるのがAswekeepsearchingの特徴ですが、本作はそんな彼等の特徴が最もストレートに出ているように思います。

伸びやかで、虚飾なく、剥き出しの温もりに満ちている作品です。

(2nd)Zia

アルバムがリリースされるまで

前作Khwaabのリリースにより、Aswekeepsearchingを取り巻く状況は変わっていきます。
国内の多くの都市を廻れるようになり、初の海外公演となるロシアツアーも敢行しました。


ツアーを終えた後、彼等は新たな経験を反映させつつ、長いプロセスを経て本作の収録曲を完成させていったそうです。
そして、そんな経験を物語として昇華したのが2ndアルバムとなるZiaです。

アルバムの魅力

最もエモーショナルなのが本作Ziaでしょう。

ギターの叙情的な旋律や美しい轟音の響きはさらに研ぎ澄まされています。
その一方でエレクトロニカ的アプローチの増加やタブラ、シタールといったインドの民族楽器の導入もあり、音色のバリエーションも増しています。


ヒンディー語のボーカルはよりエモーショナルになり、穏やかに起伏するメロディは迫力を増しています。
鮮烈さを増したエレクトリックギターの旋律、
流麗なグルーヴ感のベースライン、
緩やかながらもビート感ながらま強いテンションを秘めたドラムス。
ストリングスやインドの民俗楽器を始めとした様々な楽器が色鮮やかなレイヤーとなって、薫り高いサウンドを構築しています。

前作よりも「静」「動」の切り替えによる躍動感が強まり、その一方で壮麗な美しさを見事に描き切っています。
大自然と向き合った時に心のうちから溢れ出す畏敬の念を想起させる、スケールの大きさが印象的です。

いわゆるポストロックサウンドに近づくのと同時に、大きく離れてもいます。

バンドとしての底力を発揮した作品であり、インド出身の彼等だからこそ創り出せた作品でもあるでしょう。

(3rd)Rooh

アルバムがリリースされるまで

前作Ziaは評論家からもファンからも賞賛されました。
バンドは15か国を巡るヨーロッパツアーへと乗り出し、ベルギーやドイツではフェスティバルにも出演しました。
そこでの経験はバンドにとっても意義深いものであったらしく、次作の曲のほとんどはツアーでの経験からインスピレーションを受けているそうです。

そして、本作は全てにおいて今までとは違うアプローチでソングライティングで作られた作品であり、Aswekeepsearchingのハイライトになるとも彼等は述べています。

本作のタイトルはRooh、ヒンディー語で「魂」を意味する言葉なのだそうです。

アルバムの魅力

最もメロディアスで落ち着いた雰囲気の作品になっています。

単純に言えば、酸いも甘いも噛み締めたような大人っぽさが漂っています。

ポストロック的なきらめきとインドの民族楽器やストリングスなどが醸し出す壮麗さは相変わらずですが、曲展開については2ndのような「静」「動」の切り替えというよりも1stのような多様なスペクトラムの移り変わりを感じさせます。

ミドルテンポながらも勇壮さを感じさせるドラムス、
穏やかなグルーヴ感のベース、
ストリングス、シンセ/エレクトロニクス、インドの民族楽器といった多様な楽器が織りなす豊潤なサウンド、
ソリッドさが漂うエレクトリックギターの旋律、
そして、散在感を強めたヒンドゥー語/ウルドゥー語によるボーカル。
ポップネスも高まり、完成度の高さを感じさせます。

2ndほどの激しく感情の奔流しているわけではありません。
しかし、ストリングスを多用した荘厳な曲が増え、独特の慈しみがアルバム全体を覆っています。

また、優しく落ち着いた曲が時折顔をのぞかせるのも魅力的です。

穏やかで、力強く、泰然とした佇まいを感じさせるアルバムです。

結びに代えて Aswekeepsearchingの魅力

Aswekeepsearchingにインド性を見出すべきか

Aswekeepsearchingは、無理に一言で表現ならば、ポストロック的なエモーショナルさとインド的な泰然さを組み合わせている点にあると言えるでしょう。

ただ、2ndはもちろんのこと1stも3rdも欧米のポストロック的な激しさを感じさせる曲が多いのも事実です。
また、インドの民族楽器などがオリエンタリズム的な「チル」を表すために使われているわけでもありません。

インドという地域で生まれ育った彼等が、日々生活をしていくなかで影響を受けた音楽を自然体で消化した結果生まれたのがAswekeepsearchingなのだと思います。

数多くあるAswekeepsearchingの個性や魅力の中で最も目立つのが、欧米のポストロック界隈では見られない伸びやかな感覚なのかもしれません。

何にせよ、インドのポストロックシーンは今後も注目すべきであるように感じました。


それでは。

主要参考サイト

https://aswekeepsearching.in/ http://indian-music-catalog.com/indian-post-rock-scene/
Aswekeepsearching Talk Upcoming Third Album ‘ROOH’, Their Exciting New Visual Revamp & Much More
https://daily.bandcamp.com/features/aswekeepsearching-india-post-rock-interview Aswekeepsearching Interview Interview: Uddipan Sarmah of Aswekeepsearching on New Album Zia, Post-Rock In India and Writing https://www.redbull.com/in-en/interview-with-aswekeepsearching https://www.noizze.co.uk/single-post/2019/09/26/The-Universal-Language-Of-Post-Rock-An-Interview-With-Aswekeepsearching

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