14倍のアンチ・マトリクス/首輪のリターナー

あんまり映画を見ない俺でもマトリックスは知っている。

ヒップホップのリリックにもなってるし。
イメージしたのはAkloのRED PILL。

古いかな? でも、好きなんだ。

あれが一番有名なシーンだろうな。
世界の真実を見るための赤い錠剤を飲むか、
今まで通りの真実でない世界で安穏と生きるために青い錠剤を飲むか、
をモーフィアスに迫られるシーン。ってあれ。

主人公のネオは赤い錠剤を飲んでて世界の真実を知り、敵と戦うわけなんだけど。

それでまあ、赤い錠剤を飲むことはかっこいいこととみなされているように思う。

話を変える。
僕もまた毎日錠剤を飲んでいる。

何でか? 上がりすぎたり下がりすぎたりする感情を落ち着けるためである。
何でそんなものを飲むのか? 飲まないと社会という型にはまれないからである。

そりゃそうだ。実際に僕は型にはまれずに、社会から零れ落ちた。

それでまあ、脳神経伝達物資だかなんだかに作用して心を安定させようとしているわけである。

こないだ数えてみたんだけど、俺は毎日14錠も飲んでる。

あんまり公に言わないようにしてたけど、これ。
洗脳と一体何が違うんだろ。
人格改造と何が違うんだろ。

よく分からん薬を大人しく飲んでる俺は、果たして俺が知ってた昔からの俺といえるのか。

普通に考えれば、言えない。
しかも、自分から首輪に繋がれるために顔を差し出しているみたいなもんだ。


尊厳とか、そういう切り口から考えれば、お薬をやめて自分らしく生きる環境を切り開くべきなだけど。
生憎、俺には能力がない。

ただ、問題なのは能力の有り無しではなく、それでも突っ込んでいく勇気なんだと思う。

本来は結果なんて二の次だ。
本来は結果なんて二の次だ。
本来は結果なんて二の次のはずだ。

まあ、とりあえずは冷静に。まずはボロボロになってしまった自分の体制を整えるんだ。

俺は明日からまた働く。
俺のことをめちゃくちゃにした会社に、首輪をつけてもらって、プライドを売って、
そしていつか。
そしていつか。
そして、いつか。

まったく。と俺は自虐めいて口元をゆがめる。
あの時俺は瀕死で、何とかしてここから逃げ出そうとして。
結局、この場所に帰るわけだ。

体調が最悪だったことも確かだ。
俺に能力がないことも確かだ。
惨めな帰還者。レールから外れようと必死に暴れ、取戻しがつかないくらい故障して、それでも一周周って戻ってきた機関車。

ただ、一つだけもっと確かなことがある。
青い薬はクソだ。
だけど、赤い薬がご立派なものかもケース・バイ・ケースだ。

心躍やかに、波風を立てることなく、それでも大胆に日々の冒険を楽しめるようになれたら、と。
そう願いながら俺は年老いていくだろう。いや、違う。
それだけでは終われない。ただ、変に気張るとまたおかしくなるから。
優雅に、ふわりと。できる範囲でいいから。
心地よい夜風みたいにさ。
最悪な気分だけど、まあ、よく考えたら俺はだいだいいつも最悪な気分だった。

つまり、問題はあるけど、ない。

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