agraphというソロ・プロジェクトの全アルバムについて。 徹底的なこだわりの奥底で燃える情熱の焔。電子音響の化身<アヴァタール>



こんにちは。

agraphは牛尾憲輔によるソロ・ユニットです。
本人名義での映像作品のサウンドトラック制作、元Supercar、Bloodthirsty ButchersのメンバーとのバンドLama、電気グルーヴのサポートなど幅広い活動を行っています。

http://www.iloud.jp/interview/agraph_equal/images/agraph_equal_A.jpg

agraph名義における彼の音楽は、エレクトロニカと呼ぶのが穏当でしょう。

そんなagraphの全アルバムについて語ります。

agraphの全アルバムについて語る。 

まず文字だけでは分かりにくいと思うので、各アルバムの相互関係についてグラフにしてみました。

いかがでしょうか。
では順番に見ていきましょう。

(1st)A day,Phases

日が明けてまた沈んでいくまでを描いたデビュー作です。

本作の骨格は電子音主体のダンス・ミュージックです。
しかしその周りで血となり肉となるサウンドがそれとはやや異なるため、全体として見ても異なる音楽へと仕上がっています。

簡単に言うと、フロア仕様というよりも華奢かつ密やかになっているのです。
刻まれるビートは儚くも軽やかで、
ふわふわと転がるシンセ・電子音は柔らかな透明感に満ちて、
時折、脈打つ四つ打ちもまるで囁きのよう。
淡いサウンドレイヤーは舞い散り、漂い、触れたら壊れてしまいそうなほどに繊細で、
現代日本的ノスタルジーをたっぷり含んだ旋律は、繊細な四つ打ちとエレクトロニカ的情感をさらに高めます。


また、他のアルバムに比べるとやや躍動感があるのも特徴です。
曲調全体が帯びている跳ねるような、あるいは気持ちが沸き立つような高揚感へと繋がっています。

どことなく無邪気で、それとなく憂いある、熱を帯びた抑制美。
ダンスミュージックから派生した、夜明けの澄んだ光を描く電子音響です。

(2nd)Equal

ピアノの響きに重きを置いて創られたというアルバムです。

前作の儚いエレクトロニカ感はそのままです。
しかし、独特の繊細さや生楽器的な温かみが加わりつつも、音像の鮮明さも上がっています。

そよ風のごとくなだらかに揺れるビート、
ピアノの音色は残り香のような淡くも確かな存在感があり、
その周りで揺蕩うシンセは澄んだ透明感に漂わせます。
そして、透徹とした数多の音色がゆっくりとうねりながら重なり合い、冴え冴えとした立体感のあるサウンドスケープを形成しています。

また、Bill Evansからのサンプリングが象徴的ですが、節々からロマンティックさも垣間見えます。
都市の夜めいた欲望から紡ぎだされる洗練された深い藍が、アルバム全体に大人びた雰囲気が漂わせています。

壮大さを含んだ曲からアンビエントな曲まで幅広いバリエーションがあり、アルバム全体として緩急が付いているのも魅力的な点です。

隅の隅までまで緻密でありながら、泰然とした人間味やドラマ性を感じられるアルバムです。

(3rd)The Shader

個人的にはめちゃくちゃ好きなアルバムです。

透明なシンセの音色と気品に満ちたピアノの音色が緊張感を含んでぶつかり合い、非常にダークでエモーショナルなサウンドを生み出しています。

前作までの<ダンスフロア由来のなだらかなエレクトロニカ>というサウンドの枠組みは、徹底的に打ち壊されています。
そして、代わりに顕現したのは自由にして抽象的で、捉えがたいほどに百変化的な濃度の高い情感を含む叙事詩です。

予想しがたい変化を繰り広げていく曲、
時に美しく、時に不協和音を奏でる透明な音色のシンセ・音響、
不穏さと荘厳さを兼ね備えたサウンド・テクスチャー、
気品に満ちたピアノの音色から匂い立つ内省性、
圧力の強さを感じるリバーブ、
時に硬く、時にソフトに、予想不可能的によじれながら姿を変えていくビート、
それらのテクスチャーが複雑に絡まり合いながら、「難解」なサウンド・スケープを構成しています。

何でも細部まで徹底的にこだわって制作されたのだとか。
さらには没にしたアルバム一枚分の楽曲を全てサンプリングソースにしているそうです。
音楽家agraphとしての熱量を注ぎ込んだからこその圧倒的な情報量の高さが、渦巻く様な感情量にもつながっているのでしょう。

キャッチーな旋律がそう多くあるわけではありません。
ただし、莫大な数のパズルのピースを複雑に組み上げて創り上げた世界には、見る者を圧倒する何かが描かれています。

agraph 牛尾憲輔のこだわりが生み出す透明感の奥底にある、消えぬ焔のような情熱。

いかがでしたか。

agraphの音楽にとって、<細部へのこだわり>が最も重要なファクターだと思います。

そのあたり、彼がアニメのオタクであるところも関係があるのかもしれません。
徹底的なこだわりと、脇目も降らずにその道を突き進む情熱などは非常にオタク的とも言えます。
agraphは牛尾憲輔の孤高な化身<アヴァタール>となったものなのかもしれません。

それでは。

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