蠢く昭和の情念 車谷長吉 / 赤目四十八滝心中未遂

昭和というとノスタルジックなイメージで描かれることが多いかもしれません。

しかし、車谷長吉の作品は違います。社会の底辺や情念。畳や土の匂いがする、ほの暗い昭和でもがく不器用な人間を描き出します。

特に好きな一冊が赤目四十八滝心中未遂です。

昭和の尼崎市を舞台に社会の底辺を彷徨い、薄汚いアパートでモツを串にさし続ける仕事にありついた「私」。彼は社会から這い上がる気力を持たず、身の回りでのたうち回る底辺の人々や自分自身の醜さを冷静に観察しながら淡々と日々を生きていきます。

そんな彼の前に現れたのがヤクザの情婦アヤちゃん。背中に大きな刺青のある美しい女です。その美貌に「私」は欲情の眼差しを向けますが、あっさりと見抜かれ鼻で笑われます。

ところが、ある日の夜、そんなアヤちゃんが「私」の部屋にやってきて「ウチを連れて逃げて!」と頼み、そして二人の逃避行が…。というのがあらすじです。

個人的には村上春樹のノルウェイの森に似ている構造だと思っています。

ただ、ビートルズやパスタでお洒落な自己陶酔に浸る余韻もない社会のどん底が舞台になているということが決定的に違います。

結果として余分な飾りをそぎ落として人間の醜さと美しさを読む者の前にまざまざ見せつける怪作に仕上がっています。

生きる力をほしい貴方にお勧めの一冊です。


赤目四十八瀧心中未遂

それでは、また。


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