マッチョ・病的・エネルギッシュさを文学に トムジョーンズ/拳闘士の休息

今日は僕が一番大好きな本について語りたいと思います。

トムジョーンズの短編集『剣闘士の休息』です。

もう一冊の短編集「コールド・スナップ」は舞城王太郎さんが翻訳しているので、ご存知の方も多いかもしれません。

内容について語るより、まずは作者の経歴をお伝えした方がどんな小説を書く人物なのか分かりやすいでしょう。

(1)アマチュアボクサーとして活動し、海兵隊に入隊。

(2)しかし、癲癇により除隊になり、その後ドストエフスキーなどの文学作品やショーペンハウナーのような哲学書に深く傾倒。

(3)さらには用務員やコピーライターなどの様々な職を転々とし、

(4)アルコール中毒や薬物乱用に苦しみながら、ようやく小説家としてデビュー。

マッチョなのに病的で、どんな絶望的な状況でもすさまじくエネルギッシュ

それが彼の小説の世界観です。

生への執着を見せる末期がんの老婆。軍の病院で癲癇の発作に苦しむ海兵隊員。兄のくだらない妻を寝取る男。糖尿病・アル中・精神疾患を抱え,哲学を深く愛するボクシングコーチ。

彼等はどこか壊れていて、人生をまっすぐ歩くことができません。だけど、彼等はそんなこともお構いなしに、駆け抜けようとします。不器用に、だけど全力で。すっころんだってみっともなく立ち上がろり、再び全力で走りだすのです。

そんな彼等の一歩一歩に込められた爆発寸前のエネルギーがトムジョーンズの武骨な言葉で描き出され、読み手の心に強烈に突き刺さります。

彼の物語には「文学的」な知性はないかもしれません。だけど、手負いの獣がどんなにあざけられようとも懸命に吠え猛り生き延びようとするかのような、生きることの根幹に迫るような美しさがあります。

もし、貴方が強く生きたいと思っているのなら、是非この一冊を。


拳闘士の休息 (河出文庫 シ 7-1)

それでは、また。


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